税務調査
税務調査の対応方法
税務調査に入られた場合、迅速な対応と専門家の意見を聞くことが重要です。
ここでは、税務調査に入られた場合の対応について、解説していきます。
税務調査への対応の各ポイントについてはこちらをご覧下さい。
事前通知に対する対応
税務署から「調査に行きたい」と電話があったら、必ず次の点を確認します。
- 1日時・・・何月何日に調査があるかを聞き出す。
- 2場所・・・調査する場所が、本社なのか、工場なのか
支店・営業所なのか - 3調査の種類・・・一般調査か反面調査か
- 4調査の理由・・・どんな理由で調査を行うのか
- 5担当調査官の所属部門・氏名及び人数・・・所属部門で調査態様がわかる※特別調査か一般調査か判断できる
- 6調査予定日数・・・どの程度の調査かを予想できる
- 7調査対象年度・・・どの会計年度の調査か分かれば、対応策がたてやすい
そして、すぐに税理士に連絡し、調査当日の対応のためのリハーサル日程を調整します。
税理士と調整ができなければ、調査日を伸ばしてもらうことです。
できるだけ日程を調整して、その間に税理士と税務調査に対する打合せやリハーサルをすることです。
そのためにも、きちんとリハーサルができる税理士を選ぶこ必要があります。
税務署は原則として、調査対象者に対して、あらかじめいつ税務調査に行くかを連絡します。しかし、それは事前に連絡しても調査に支障がないときに限られます。
連絡をしたために、調査日までに資料の隠蔽や工作などをされては困るためです。
ですから、「支障がある」とみなされた場合には、事前の連絡もなく、突然抜打ちに調査をされます。
ただ、調査は任意であり、無予告調査も正当な理由があれば断ることもできますが、一般調査と同様「受忍義務」があり、断ることはできないとなっているのです。
無予告調査の割合は全調査の5%くらいで、それほど多くはありません。
無予告調査で注意すべき応対方法は以下のとおりです。
- 現金監査調査は必ず行われるので、日々、現金残高を正しくすること
- 話のつじつまが合わないと疑われる
- 個人と会社との区分は明確にすること
- 必ず代表者の調査開始に関しての了承が必要であるので、正当な理由があれば延期も可能である。
調査当日までに行う準備
一般の税務調査では、連絡から実施までに通常10日から2週間ぐらいの余裕があります。
その間に、できるだけ手を尽くしておきましょう。
多くの場合、過去3期にまでさかのぼることが多いので、その3期について整備されていない事項や、不十分な処理しかしていない事項があれば、すべてを整理しておきたいところです。
是非やっておきたい事柄は以下の順になります。
- 1申告書、総勘定元帳等の整理
- 2伝票・請求書・領収書などの整理
- 3契約書(印紙の貼付確認)・証憑類の確認(稟議書含む)
- 4給与台帳・源泉徴収簿
- 5帳簿類の整理
- 6金庫・ロッカー・事務机・書類棚の整理整頓
- 7調査日現在の現金勘定の確認
- 8棚卸資料(原始記録)の確認
- 9パソコン内の整理(社長、経理担当)
また、その他に事前に確認しておくべき事項としては以下のものが挙げられます。
- 定款・各種議事録の有無と管理状態
- 各種届出書の保管とそれに基づく税務処理の確認
- 契約書・稟議書・取締役会決議書の整合性
- 社内諸規定と税務処理の整合性
- 請求書・領収書による支払い先の確認(相手先との一致の確認)
- 保存期間内の帳簿書類の有無
- 取引先以外のカレンダー、記念品、メモ用紙、ライターなど名入りのものの整理
- 社用電話帳の取引先以外の会社名の有無
- 個人預金関係の整理
帳簿はこんな所まで注意が必要です
- 帳簿や伝票に付箋が貼ったままになっていないか
- 帳簿にメモ用紙が挟まったままになっていないか
- 帳簿や伝票に鉛筆などで書き込みがないか
- 帳簿に○印やレの印でチェックしてないか
- 帳簿や伝票に鉛筆で数字が書き込んでないか
- 経営者や経理担当者の机の上のメモ用紙やカレンダーへの書き込み
税理士・社内の責任者とは周到に準備を!
税務調査に際して、通常は税理士に立会ってもらいます。
しかし、調査を受けるのはあくまでも会社、個人事業者なのです。
すなわち、直接調査官に対応することになるのは、経営者や経理担当者です。
税理士は、税務代理や、税務書類の作成を業務としていますが、税務調査にあたっては、基本的には中心的に受け答えすることはできません。
社内的には次のような体制を整えておくと良いでしょう。
- 対応責任者を各部門ごとに決めておく
- 各部門が連携をとって、自分勝手な判断だけで対応しないように決める
- 各部門ごとに取引実績など事実関係を把握しておく
- 各部門の取引実態について、処理が税法などの法令に適合しているかを確認しておく
- 分からないことは分からないと答えるようにする
税務調査当日までにそろえておくべき帳票類
- 1売上関係の書類 ・ 見積書
- 納品書
- 領収書の控え
- 請求書
- 工事契約書
- 総勘定元帳
- 入出金伝票
- 小切手の控え
- 売掛帳、買掛帳(3期分)
- 2経営関係の書類 ・ 契約書
- 稟議書
- 議事録
- 同族関係者との取引
- 賃貸借契約書
- 3人件費関係の書類 ・ 給与台帳
- タイムカード
- 出勤簿
- 扶養控除申告書
- 役員報酬改定の議事録
- 社会保険関係の書類
- 4仕入・在庫・外注費関係の書類・見積書
- 請求書
- 納品書
- 在庫表(原始記録)
- 5その他用意したほうがよい書類・経営者の預金通帳
- 当日の現金残高
調査当日には
調査官の身分証明書を必ず確かめる
調査官は、税務調査を行うときには身分証明書を携帯し、調査先などで求められれば提示しなければならないと税法で義務付けられています。
ですから、税務調査に際しては、調査官の身分証明書の提示を受け、身分を確認することからスタートさせます。
一般の税務調査では事前に連絡が入りますが、特に無予告調査のときは、きちんと身分証明書の確認が必要です。
どんな用件で、何の調査なのかを確かめる
税務調査には大きく分けて3つの目的があります。
- 1 更正(税務署長が職権で申告所得額や税額の修正をすること)や
決定(申告がない場合に所得額や税額を決めること)などの課税処分を行うことを目的とすること - 2 確定した税金について滞納があった場合、徴税を目的とすること
- 3 国税犯則取締法によって定められた犯則事件の資料を集めることを目的とすること
税務調査を行う際には、調査官はどのような目的による調査なのかを示す必要があります。ですから、税務調査が入ったら、具体的な調査内容の説明を受けてから調査に入ってもらうことです。
調査中の会話で注意すること
実地調査は、まずは挨拶から始まって、会社の概要の説明を求められたりします。
とにかく誠意を見せ、力まず、できる範囲で応じるようにしましょう。
会社概要の説明は、経営者か、決定権のある人が行うべきでしょう。
業界について、売上や仕入についてできるだけ長い時間をとりましょう。
そのために何を話すかあらかじめ考えておいたほうがいいでしょう。
以下にポイントを記します。
- あること、ないことを話さない
- 同業他社の批判や噂話はしない
- 話はつじつまが合うようにする
- あらかじめ決めていたシナリオから離脱しないように
- 女性調査官に注意(一般的に細かい調査をする)
どのような調査方法で調べられるのか
調査官は申告ミスや申告漏れを指摘するために、わずかなミスでも見逃さないよう様々な調査手法を用います。
比較分析では、調べようとする項目(数字)について前期と当期あるいは標準値と比較することで問題点を洗い出し、さらに帳簿と領収書などの証憑類を突き合わせる(証憑突合)ことで事実確認を行い整合性を見ます。
また、帳簿や明細表などの計算が正しいかどうかをチェックしたり(計算突合)、帳簿をお互いに突き合わせ(帳簿突合)、正しい申告であったかを確かめます。
そのほかには以下のようなものがあります。
- 現場確認調査 調査官自らが実地棚卸をして現物があるか、数量や価格をつかむ方法
- 調査官が棚卸に立ち会って、実際の状況を調査し実数が正しく算出されているかチェック
- 工場、倉庫、店舗、支店、営業所などの状況を調査し簿外資産などが隠されていないかチェック
- 反面調査 銀行などの金融機関や仕入先、取引先などに照会して、取引の有無、残高、取引額などの答えを求めるもの
現場調査で結論は出ない
税務調査が行われている間、問題点や疑問点があれば、その都度調査官のほうから指摘されます。
しかし、調査官は、その場では自分の意見を表明したり、ましてや結論を示すことはしません。
調査経過を税務署に持ち帰ります。
調査官は、その日の調査を終えて税務署に持ち帰ると、上司である統括官に報告して、問題となる事項については指示を受けて検討に入ります。
統括調査官の指示によって調査範囲を広げたり新たに調査項目を増やしたりします。
調査の終了
税務調査ではいくつかの問題点が指摘されますが、それらをすべて受け入れると調査が終了するといわれています。
受け入れずに長く対立していると解決に至りません。
場合によっては一部を認めるという一種の妥協を行って、調査を終了に導くことが必要となることもあります。
指摘された際の注意点
実地調査では、調査官は何らかの指摘をすることを目的としています。なので、指摘を受けたときの対応を検討しておくことが大切です。
ポイントしては次の項目別に対処すればよいと考えられます。
- 指摘されたことを認めてしまうと、次年度に税金が取り戻せない項目(交際費、寄付金、役員報酬・賞与など)は、指導事項にとどめてもらうように交渉する。
- 配偶者や家族に対する報酬、経済的利益など、指摘事項を認めてしまうと次年度以降も継続的に課税対象になるため注意する。
- 本来なら今期計上されるものがズレて翌期に計上されることになる項目(売上・在庫の計上漏れ、収益・費用の計上漏れ、引当金の損金算入限度超過額、修繕費の否認など)は、次年度以降取り戻せる場合があるので、認めてもよい。
修正申告に応じるか、更正処分を受けるか
「修正申告」とは法人税や所得税、相続税、消費税などの申告書の内容に誤りがあって、納税額が過少であった場合に、納税者自ら正しい申告に修正する手続きのことをいいます。
「更正処分」は、納税者が修正申告に応じない場合、税務署としての職権によって行う手続きです。
税務署としては、「更正」にせず、できるだけ「修正申告」を勧めてきます。
その理由は、「修正申告」を行うと、本税に対して「異議申立て」ができなくなるからです。
つまり「修正申告」は、納税者が過ちを認めたことになり、その後の権利を放棄したことになります。
「更正」の場合は「異議申立て」の手続きがとれます。
したがって、調査官が「調査を終わらせるので修正申告に応じてください」と求めることになるのです。
修正申告・更正・決定で追徴される税金の種類
- 本税(法人税・消費税・申告所得税)
- 過少申告課税(法定申告期限内に申告したが、更正、修正申告があった)の場合、増加した税額の10%
- 無申告加算税(期限後申告、決定処分、決定処分後の修正申告・更正処分があった)の場合、増加額の15%
- 不納付加算税(源泉徴収などによる税額を法定納付期限までに完納しなかった)の場合、未納付額の10%
- 重加算税(更正・決定・修正申告などによる税額のうち、隠蔽・仮装に基づくものがあった)の場合、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%、不納付加算税に代えて35%
- 延滞税(正規の手続きを経ずに、法定納期限までに本税を納付しなかった)の場合、原則として法定期限の翌日から2ヶ月間は年7.3%、その後は年14.6%
- 利子税の場合、延長の期間の日数に応じて原則として年7.3%、相続税・贈与税においては、その財産の情況に応じて原則として年0.6~3.3%
税務調査に強い税理士
税務調査において、一般の納税者がプロである調査官と対等に渡り合うことは困難です。
ですから、第一に納税者の味方になってくれる、信頼のできる税理士を探すことが重要です。
信頼のできる税理士とは、税務調査の際に納税者のために尽力してくれる税理士であり、調査官の指摘に正当な見解で対応してくれて、それでいて、できる限り追徴税額が少なくなるように対策を練ってくれる税理士なのです。
調査官の指摘する問題点について納税者がうまく対応できるように補佐してくれれば、調査を早く終わらせることができますし、当然追徴税額を少なくすることができるのです。
このように税務調査における税理士の返答の仕方や対応いかんで調査の進行や結果に大きく影響してきますし、日ごろから、いつ税務調査が入っても問題を指摘されないような記帳や税務処理を行うように助言し、安全な方向にリードする役割があります。
税務調査に強い税理士のポイント
- 1円でも安く、1日でも早く調査を終わらせてくれるか
- 納税者の代理人となって納税者の味方になってくれるか
- 税法に通じ、実務経験が豊富か
- 説得力があり、交渉をうまく切り回せるか
- 責任感が強いか